2007年 08月 19日
シャドーのいる風景
凶暴な面構え
太く厚い胸板
逞しく隆起した首の肉
飼い主をも怖れぬ猛犬だ
名前をシャドーという
地を裂くような低い唸り声でボクを威嚇する

c0120913_13194118.jpg
デッキに佇むシャドー Rollei 35s


ところが一週間も過ぎると
ようやくボクの顔を憶えてくれたのか
吠えなくなった
それまでは
ボクの姿が見えなくなるまで吠え続けていたのに

あるとき
風通しのいい場所に座って
湿った熱帯の空気を楽しんでいると
背後に気配を感じた
シャドーだ
音もなく近づいてきて
鼻面をボクの肘の辺りにこすりつけている
ボクは縮みあがった
シャドーの鼻息が腕にかかる
やばい
ガブリとやられたらひとたまりもない
しかし
吠えるでもなく
噛みつくでもなく
シャドーはボクの斜めうしろに静かに座っている
いつものように眉間に皺を寄せ
何か言いたげな
もどかしげな表情でボクを見ている
彼に初めて会ったのは五年前だ
以来
こんなに近づいたことはなかった
ボクは身を硬くしていた
しかし
ここで恐怖心を気取られてはまずい
覚悟を決めてポケットから煙草を取り出して火を着けた
そして知らんぷりを決め込んだ
シャドーは煙そうに鼻を鳴らしていた
どれぐらい時間が過ぎただろう
気が付くとシャドーはどこかへ立ち去っていた

あとで飼い主に
「あれはどういうことなの」
ときくと
あそこはシャドーのお気に入りの場所で
いつもあの場所に座って外を眺めているのだという
「へえ、でも、吠えへんかったし、咬まへんかったよ」
「ササキさんがうちの客だとわかったのでゆずったんです」
そうか
場所をゆずってくれたのか
悪いことをしたなとボクは思った
その日から
ボクはシャドーが少し好きになった

c0120913_1520361.jpg
猛犬シャドー OLYMPUS OM-1


帰る日
玄関を出ると
シャドーは犬小屋の前で退屈そうに寝転がっていた
「帰るよ」
と声をかけると
重そうに首だけもたげてボクを見た
何も言わなかったけれど
「また来いよ」
と言ったような気がした

by ikasasikuy | 2007-08-19 10:13 | 動物心理学 | Comments(4)
Commented by DOZ at 2007-08-21 00:57 x
シャドーの唸る声は毎度ながら恐いです
一度も噛まれたこと無いですけど
横通る時はやっぱり恐いです
久しぶりにシャドーに合いたいなぁ
あ、でも
やっぱりちょっと恐いかも・・・
Commented by ささき at 2007-08-21 04:19 x
DOZさん
ボクもちょっとあいたいkamo
けど
また
最初の一週間は吠え続けるんやろな
ほんで
帰る頃になると
吠えんようになると思います
Commented by ふっじん at 2007-08-21 12:18 x
うちの会社はドーベルマンを飼っております。
今はまだ子犬ですが大きくなったら
めちゃくちゃ怖いです
初代がそうでした
臆病者のわたしは
今の内にとせっせと餌付けをしているところです
Commented by ささき at 2007-08-21 18:44 x
ふっじんさんこんばんわ

2年ぐらい前
タイで犬に足を咬まれて以来
どうも犬がナニです
子犬を守ってる母犬の横を自転車で通っただけやのに
犬捕り(むかしそんな仕事があったんですけどね)とまちごたんか
ごっつい剣幕で歯を剥き出して吠えられて
50mぐらい追いかけてきたんです
ママチャリやったし
スピードは断然犬の方が速いんです
すぐに追いつかれて
「なんにもしてへんやん」
ゆうてゆうてんのに
話し合いに応じる気配もなく
いきなり
「ガブッ」

咬みよったんです
血ぃがブァーて出て
痛かったです
なにしろ相手は犬やから言葉が通じひんし
それにタイの犬は日本語かいもくです
もうちょっとタイ語を勉強しとくべきでした

ドーベルマンのいてる会社
辞めるわけにはいかへんのですか


<< 観覧車のある風景      豆腐百珍 >>