2007年 04月 03日
三佳
ちょっと前
わが町「さかせがわ」のくだりで

 うどんの「三好」がなくなって
 広島焼きの「ほり川」がつぶれて
 もう
 うまいものを食わせる店など皆無に等しいボクの町の駅前だ
                 (tm 2007/3/23 "sakasegawa")


書いた
たしかに書いたのだが
ひとつ大きな勘違いをしていた

逆瀬川駅裏に
四年ほど前から「三佳」という蕎麦屋が店を出している
ぴちぴち姐さんも行ったことがあるという店だ
もちろん蕎麦だけではなくうどんも供するらしい
ボクはまだ一度も入った事はなかった

今から二十年前
同じ場所に「うまい」うどん屋があった
きつねうどんが評判だった
ほどよく甘く煮たうす揚げと、しっかりとしたかつお出汁が絶妙だった
屋号を「三好」といった・・・(と思っていた)
読みは同じ「みよし」だが字が違う・・・(と思っていた)
つまり
ボクは長い間、「三好」と「三佳」は別の店だと思い込んでいたのだ


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逆瀬川「三佳」(Casio G'z One)



昼にはまだ少し時間があったが
暖簾がでているのを見届けた平蔵は「三佳」の暖簾を潜った
店は分厚くて大きな一枚板のテーブルのすっきりとした佇まいで
いかにも「味」で勝負をしているといった風情である
二十年前
平蔵が通った「三好」とはまったく違う店構えである

「いらっしゃいませ」

かなり薹が立ちきった女中が茶を運んできた
小洒落たポケットアルバム大の品書きを捲ると
三佳定食というのが目に飛び込んできた

「これは豆ごはんがついておるのか」
「はい、かけ蕎麦に豆ごはん、茸和えの一品、それに香の物が付きますでございます」
「うむ、それをたのむ」
「かしこまりましてございます」

待つこと十分
三佳定食が運ばれてきた


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シンプルな三佳定食(Casio G'z One)


豆ごはんは久しぶりである
まず
豆ごはんからひとくち

「うむ、これは美味い」

ほのかな塩加減である
豆ごはんの決め手はこの塩加減だ
これは
祇園「山ふく」の豆ごはんに勝るとも劣らぬ味
つまり
勝るとも劣らぬ塩加減である

次いで蕎麦をひとすすり

「うむ、見事なかつお出汁だ」

平蔵は思わず頬を緩めた
なぜなら
品書きの仕舞の方に「カレーうどん」の文字を認めていたからである

「これは期待できるやもしれぬ」

このことであった
貪るように食べ切った平蔵は
女中に

「亭主を呼んでくれ」

といった
女中に声をかけられ出てきた店の主は
意外にも若い男であった

「亭主か」
「さ、左様でございます」
「ちと訊ねるが、この店、いつからやっておる」
「へい、ちょうど二十年になりますでございます」
「なに、二十年とな」
「へい、今の店に改装してからは四年でございますが」
「改装したのか」
「なにぶん古ぼけてきましたもので」
「うむ、その、二十年前じゃが、このあたりは小座敷ではなかったか」
「そ、その通りでございます」
「つまり二十年前からみよしは三好ではなく三佳であったというのじゃな」
「さ、左様で・・・」
「うむ、わかった」
「へ、へえ・・・」
「なかなか佳い味であったぞ、また来る」
「ありがとうさまにございます」


つまり
その当時から「三好」ではなく「三佳」だったのだ
あのころ店を切り回していた老夫婦は
今の亭主の両親であろうか
そのことを平蔵は敢えて訊ねなかった
今も健在であろうとは考えにくいからであった

by ikasasikuy | 2007-04-03 21:55 | めん類学


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