2007年 01月 16日
日本橋から堺筋を南へ あさひのカレー天ぷらうどんに驚愕する蓑吉を連れて 平蔵はジャンジャン町へと向かった 目指すは本家「ホルモン道場」 あの日之出屋綿左衛門も通うという チープでディープなホルモン焼き屋である 先日 今宮戎参詣の帰りに立ち寄った際に 「臨時休業」 の貼り紙を見た平蔵の頭の中は 以来、寝ても覚めてもホルモン道場であった 特に何がどうという店ではない 清潔感などまったくないカウンターだけの小さな店なのだが ここがなかなかどうして この界隈では注目を浴びる店なのである もっとも 数年前までと今では 客筋もがらりと変わった 以前は薄汚れた労務者の溜まり場であったが 今は若い婦女子も訪れるという有名店になっている それというのも グルメ雑誌や旅行ガイドブックなどが こぞって新世界、ジャンジャン町を取り上げたからである そして ディープ大阪の食文化として たこ焼き、串カツ、どて焼き、ホルモン焼きなどを紹介し やんぐじぇねれぇしょんを刺激したのである その結果として ここを心の拠り所としてきたおーるどじぇねれぇしょん達は 片隅に追いやられようとしている 「蓑吉、これがホルモン焼きじゃ」 「こいつぁたまらねぇ」 「さあ、喰え、遠慮するな、もっと飲め」 「旦那、もうじゅうぶんにいただいておりやす」 「そうか、よし次行くぞ」 「まだ行くのですかい、もう喰えませんて」 「だらしのないやつじゃ、さ、もう一軒じゃ」 このあとぜにやの串カツをたらふく腹に収めた蓑吉は 鬼の平蔵の歓待ぶりに気味悪さを覚えた 「こいつはタダではすまねえぞ」 すでに 平蔵のために命を投げ打つ覚悟を決めた蓑吉ではあったが わが身の行く末に不安を覚えぬでもなかった いつしか辺りには夜の帳が下り そこここで 酒飲みどもの嬌声、怒声が響いている そして 闇夜にそびえる通天閣だけが そんな酔客達を優しく見守っているのであった
by ikasasikuy
| 2007-01-16 09:40
| 大衆社会学
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