2006年 12月 08日
2006/12/8 「tsurutontan」 金曜日の昼前 平蔵は暇を持て余していた 「堺の加知造でも呼び出して新地で昼飯でも食うか・・・」 ところが 「長谷川様、申しわけございません、いま忙しゅうしておりまして」 「なに、忙しいだと。日乃出屋の仕事か」 「左様にございます」 「ちょとだけ抜けられぬのか」 「それが猫の手も借りたい程でして・・・またのお誘いを」 と、にべもない 「しかたがない、独りで食うとするか・・・」 堺の加知造にふられた平蔵は一人寂しく曽根崎新地へと歩み始めた 「つるとんたん」は全国的に有名なうどん屋である 逢坂ではこの曽根崎新地に支店を出している さすがに新地に出す店だけあって店構えからして小洒落ている 「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか」 「左様」 「ご案内いたします」 女中の応対もなかなか堂に入っている 奥まったところにカウンター席がある ここなら落ち着いて食することができそうである 「カレーうどんをたのむ」 「麺は太麺と細麺がございますが、いかがいたしましょう」 「細麺をたのむ」 「かしこまりました」 単品だけの注文を繰り返したり 過去形を使ったりしないところが気に入った 待つこと十分 運ばれてきたカレーうどんを見て平蔵は瞠目した 言葉を失った 直径一尺以上もある大きな丼なのである まるで洗面器ではないか 頭がすっぽり入る大きさである まず出汁をひとすすり 「うむ」 旨味のよく出た出汁である 牛スジをふんだんに使っていることがわかる しかし かつお出汁が弱い 「も少しかつおの風味が出ておればのぉ」 平蔵は思案顔になったが それでもこの出汁は「悪くはない」のであった 次に麺をひとすすり 「おお、これはみごとじゃ」 平蔵は丼に顔を埋めつつ満面の笑みをたたえた この麺 コシがあり過ぎず ネバリ過ぎず なおかつ歯切れがよくカレー出汁によく絡む 理想的なカレーうどんのうどんである 平蔵は一心不乱に食べきった 最近は 高級店ともなると おしぼりのほかに カレーうどんには必ず紙エプロンとレンゲが付く さらに熱いお茶とは別に冷水が付く この店 さらにさらに「辛味調味料」の壷まで付いてくる 「お好みの辛さに味をお整えください」 とのことだが平蔵は気に入らない もちろん平蔵は壷のふたを開けなかった 店の味など 「客がいじるものではないわ」 というのがカレーうどん改方長官、長谷川平蔵の考えである 後日談 池:どうじゃ、だいぶ端折ったぞ 平:なるほど前作よりだいぶ短いですな 池:しかし、何かもの足りぬわ 平:盗賊が出て来ぬからではないですかな 池:やはりな、しかしそれを出すと長ごうなるぞ 平:左様、盗賊を出すと長ごうなり申す 池:当分このセンでいってみるか 平:そうですな、このセンでまりましょう
by ikasasikuy
| 2006-12-08 11:49
| カレーうどん改メ
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