2006年 11月 20日
南船場3丁目の狭い南北筋を いつもの浪人姿の平蔵が悠然と歩いている 目指すは元祖きつねうどんの店「松葉家」である 「きつねうどん」はこの店で生まれたという 老舗中の老舗である 店の中は薄暗く全体に薄汚れており さすがに老舗らしい雰囲気を醸し出している (Casio G'z One) 開店間なしの店にぶらりと入った平蔵を それと知ってか 店の女将は奥の席へ座るようにすすめた 入り口近くはほかの客で立て込んでいたのである 平蔵が奥の席へ行こうとすると 面白い顔の小女が現われて 「こちらへどうぞ」 と入り口ちかくの席へ案内する 「いや,女将が奥へと申したぞ」 「いえ,こちらへどうぞ」 「それがしは奥がいいのだがな」 「いえ,こちらへ」 どうも頑固で頭の弱そうな小女である それを見ていた客の女が 「いま,女将さんが奥へてゆわはったわよ」 と笑いながら言っても 「いえ,こちらへどうぞ」 と頑としてゆずらない 「わかった,わかった」 平蔵は事を荒げぬよう言われるまま入り口横の席に着いた 「なににいたしましょう」 「肉カレーうどんをたのむ」 「かしこまりました」 素直そうに見えて頑固な小女である 待つこと十分弱 小女が運んできた肉カレーうどんは 思いのほか小さなうどん鉢に入っていて 見た目にもうまそうな色つやである 箸を割っておもむろに入箸 とろみ具合も適度で平蔵の好みである まず出汁をひとすすり 「うむ・・・」 名代のうどん屋にしてはおおざっぱな味である カレーの風味が効いているわけでもなければ 鰹出汁が決まっているというわけでもない 「これはいかぬな・・・」 次にうどんをひとくちすすってみる 「おお,これはなかなか良いうどんである」 水うどんの茂凡 あるいは元祖カレーうどん野原の麺を彷彿とさせる なかなか見事な打ち加減である たしかに きつねうどんにするなら絶妙の逢坂うどんになるであろう しかし 「このカレー出汁ではなぁ・・・」 であった 麺だけをすすった平蔵は 出汁を全部飲み残して店を出た ところでこの松葉家 店の主人の話によると 「松葉家」という屋号のことでほかの店から訴訟を起こされたらしい もちろん訴訟を起こした店よりもこっちの方が古いのだが 向こうは先に屋号を登録したそうな それで仕方なく「うさみ亭マツバヤ」という覚えにくい名前に改めたと言う 常連客は 「逆に訴訟を起こしたらどうか」 と後押しするが 主人は一向に意に介さず 「うちは名前より味ですから」 と潔く言ったものである のれんをかき分けつつ 「その味がこれではのう・・・」 と舌打ちをする平蔵であった
by ikasasikuy
| 2006-11-20 12:38
| カレーうどん改メ
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