<   2006年 10月 ( 31 )   > この月の画像一覧

2006年 10月 31日
あさひ
雲ひとつない秋晴れの空の下
堺筋と千日前通が交わるあたりの雑踏に
カレーうどん改方長官・長谷川平蔵の姿を見ることができる
平蔵はこのところろくでもないカレーうどんに翻弄され続けている
さすがに堪忍袋の緒が切れたのであろうか
脇目も振らず黒門市場門外「あさひ」に飛び込んだ

c0120913_13495950.jpg


「これは、これは、長谷川様」
「おう、いつものやつをたのむぞ」
「かしこまりましてございます」
「早くしてくれ」

心を許している店なのか
平蔵の口調も若かりし頃の無頼ことばに戻っている

「近頃はろくでもねえものばかり食っているのでな」
「さようでございますか」
「たまさかにはここの味が恋しくなる」
「ありがとうさまに存じます」
「おい、しゃべってばかりいねえで早くたのむぜ」
「だいじょうぶでございます、口と手はべつでございます」
「おやじ、なかなか言うじゃねえか」

待つこと十分弱
香り立つカレー天ぷらうどんが運ばれてきた

c0120913_135096.jpg


あっさりめのカレーあんは鰹出汁がたっぷりと効いて
それが腰抜けのうどんに見事にからんでいる
トッピングは堂々たる海老天が二本だ
平蔵は無我夢中で貪り食った

「ふうっ、おやじ、あいかわらずうめえな」
「おそれいりましてございます」
「この出汁、どうやって取るのじゃ」
「そ、それは企業秘密にございます」
「ほお、この長谷川平蔵にも言えぬと申すか」

亭主は一瞬たじろいだ
目が宙を泳いでいる

「いえ、長谷川様にだけは申し上げます」
「わっはっはっ、冗談じゃ、冗談じゃ。出汁の取り方は伏せておけ」
「申し上げぬともよろしいので」
「かまわぬ、絶対の自信、生涯大事にせいよ」
「おそれいりましてございます」

満足げな笑みをたたえつつ
ゆるりと表へ出た平蔵の頭上には
抜けるような青空が広がっていた
神無月も終わりである

by ikasasikuy | 2006-10-31 13:48 | カレーうどん改メ
2006年 10月 30日
にっぽんばし
大阪の日本橋は
「にほんばし」ではなく
「にっぽんばし」である
他所から来た人ならいたしかたないが
大阪に住んでいる者までが「にほんばし」と言う
とても嘆かわしいことである

c0120913_13513960.jpg
かつて電気街として隆盛を誇った日本橋


およそコンセントにプラグを突っ込んで使う道具なら
ここへ来ればなんでも有った
まず無いモノは無いといっても過言で無いほど
なんでも揃っていた

サラリーマンになって
初めてもらった給料を握りしめ
ボクはこの町で分不相応なオーディオ装置を買った
もう三十年以上も前のことだ
DENON, AKAI, MARANZ, SANSUI, JBL, AKG......
毎月々々
ボクは給料を手に日本橋へやって来た
夢があふれる電気の町だった
車道にはクルマが溢れ
歩道にはヒトが溢れていた

ところが
いまはどうだ
キタとミナミに大きな電気屋ができて
客の流れが変わったのか
老舗の電気屋は次々と店を畳み
当時の隆盛は影を潜めてしまった
そして
いったい何屋なのか
顔の見えない怪しげな店が表通りに進出し
輝いていた町がくすみだしている
日本橋はいま
ゴーストタウンになろうとしている

by ikasasikuy | 2006-10-30 13:50 | 大衆社会学
2006年 10月 29日
subway tham
c0120913_13532668.jpg


大阪の地下は穴だらけだ
細くて長い穴が
まるで土竜の巣のように
縦横無尽に掘りめぐらされている
そして
穴の中を景色の見えない電車が走る
それぞれの駅は
JR、阪急、阪神、京阪、近鉄、南海、阪堺電軌などとつながって
行きたいところはどこへでもいける仕組みになっている

狢のように穴を這い回って
やっと地上に這い上がってきたボクは
いつも東西南北を見失うのである

by ikasasikuy | 2006-10-29 13:52 | 鉄道学
2006年 10月 28日
音威子府そば
c0120913_13544375.jpg


音威子府蕎麦
ほぼ真っ黒な蕎麦である
今年も
ぽーる六十一番弟子が送ってくれた
噛めば大地の恵みと深い滋味が鼻腔に香る
うまい
これでまた
無事に年が越せそうである
おおきに

by ikasasikuy | 2006-10-28 13:53 | めん類学
2006年 10月 27日
Apple on Apple
c0120913_13555856.jpg


長野県のりんごである
品種名はジョナゴールドだが
わが家では
「あくとのりんご」
と呼んでいる
食べ始めてもう二十年になる
ぱきっとした歯ごたえと
さわやかな酸味がたまらない
徳島のジャンキー内藤家も
このりんごを食べているらしい

あくと(自由個性集団)
〒381-0405 長野県下高井郡山ノ内町夜間瀬2175
畔上時雄・信枝

c0120913_13561367.jpg


送られてくるりんごには必ず生産者の顔写真が付いている
それをみた妻が自分のことを棚にあげて

「あぜがみさん、としいったなー」

と、ぼそっとつぶやく秋の午後であった

by ikasasikuy | 2006-10-27 14:04 | 食文化論
2006年 10月 26日
明石の飯蛸釣り
東の空に朝の気配が漂いはじめるころ
ボクは海峡の上にいた
イイダコ釣りだ
今日は初めてのイイダコ釣りだ
潮がいいときは三桁釣れるという
しかし
「今日の潮は最悪やな」と船頭は言う

c0120913_13584917.jpg
明石海峡の夜明け


明石海峡の釣りは小潮まわりがよい
大潮のときは潮の流れがはや過ぎて釣りにならないのだ
今日は大潮だ
見事に大潮だ

しかし
釣り始めてすぐ
イイダコは乗った
マダコのようなはっきりとした「乗り」はないが
水深10mの浅瀬で釣るので
イイダコの「乗り」は手に取るようにわかる

c0120913_1359248.jpg


同じ道具を使っても
釣れるヒトにはポコポコ釣れ
釣れないヒトにはまったく釣れない
イイダコ釣りというのはそんな釣りのようだ
なにかがちょっと違うだけなのだが
釣果は大きく違ってくる
隣の釣り人は気の毒なほど釣れない

c0120913_13591329.jpg
西海丸船頭オリジナルのイイダコジグ


「これはな、わしがこさえたんやで」
西海のオヤジの言によると
試行錯誤の末「このカタチとイロ」になったという
見事にシンプル&チンプである
こんな単純で陳腐なジグをイイダコが抱くのかと思うと
釣りをしながら笑いがこみ上げてくる

朝1時間
昼2時間
正味3時間の釣りだったが
68ハイ釣れた
船頭は
「しおがいっとんのによう釣ったなあ」
と褒めてくれる

c0120913_13592445.jpg
大きいので130g、最小は20g


イイダコは漢字で「飯蛸」と書く
卵が「飯」のようだからだ
しかし
今のイイダコには「飯」は入っていない
イイダコが抱卵するのは冬から春にかけてだ
その時期のイイダコは最高にうまいらしい

刺身
天麩羅
から揚げ
たこめし
おでんだね
いろんな料理法があるが
定番は「甘辛煮」だ

c0120913_13593770.jpg


水1、醤油1、酒1、砂糖少々でコトコト煮る
酒の肴によし
惣菜によし
芋焼酎が芋焼酎がススムくんなのだ

by ikasasikuy | 2006-10-26 13:56 | 釣魚小全
2006年 10月 25日
やなぎ
秋風がすこし哀愁を帯び始めた神無月の二十五日
この日も着流しの浪人姿に身を隠した平蔵の姿が市中にあった
朝方まで煙るように降った雨は熄んでいた

堺筋本町の交差点から堺筋を少し北にあがったところの
瓦町一丁目に
「やなぎ」はあった

c0120913_1425620.jpg


聞けば大正七年の創業というから
逢坂でも老舗中の老舗のうどん屋といってよい
しかもこの店の鰹出汁は超一級品と聞き及び
しばらくうまいカレーうどんに出会っていない平蔵の足取りも心なしか
「軽かった」

間口はさほど広くはないが奥行きがあり
2階にも客席を設けている
まだ四つ半(現代の午前11時)というのに
押しかけんばかりの客の入りである
広い店内はあっというまに満席となった
大店が建ち並ぶ場所柄(現代でいうビジネス街)とはいえ凄まじい繁盛ぶりである
茶を運んできた女中に
「カレーうどんはできるか」
と問うと
「できますでございます」
「ではカレーうどんをたのむ」
「お昼の時間はおにぎりと香の物がつきますが」
「いらぬ」
「単品でございますね」
「さよう」
と言い放ってから
これは「まずかったかな」と平蔵は思った
見ればほぼすべての客がサービスのおにぎり付きである
「カレーうどんの単品では怪しまれはせぬか」
このことであった
しかし
案ずることはなかった
店の者は注文と給仕に忙殺されていて
単品の客を怪しむゆとりさえないようである

待つこと十分弱
平蔵の前にカレーうどんが運ばれてきた

c0120913_143656.jpg


立ち上がる湯気から
「ツン」とカレーの香辛料が香り立つ

まず出汁をひとすすり
「むむ・・・これはいかぬな」
たしかに和風鰹出汁がよく出ているのだが
カレーの香辛料が効きすぎている
ピリピリと舌を刺す辛さである
そもそもカレーうどんとは
印度と邪馬台国の異文化コミュニケーションであらねばならぬ
これでは印度人もビックリではないか

次に麺をひとすすり
「むむむ・・・これもいかぬわ」
麺にコシがありすぎるのだ
しかも太い
これはまったくの讃岐風ではないか
麺に出汁が絡まぬ
ここに至って平蔵は
がっくりと肩を落としたものである

それにしても
これが大正七年創業の逢坂うどんとはとても思えぬ
近年のさぬきうどんの台頭は
このような老舗にまでも悪影響を及ぼしているのである
「自家製麺」が聞いて呆れる

席を蹴立てるように店を出た平蔵は
秋らしくないどんよりとした曇り空を見上げながら
「いかぬ、いかぬ」
と何度もつぶやきつつ雑踏へ消えていった

by ikasasikuy | 2006-10-25 14:01 | カレーうどん改メ
2006年 10月 24日
ヒメクダマキモドキ
 クルマで出かけよ思たら
「・・・?」
ボンネットに葉っぱが一枚付いとおる
いや
よお見たら葉っぱちゃうぞ
なんと虫や
クツワムシみたいなカタチの虫や

c0120913_1452775.jpg


さっそくデジタル写真機で撮影する

気づかれんよう
斜め後ろからそおっと近寄って
「パシャリ」

c0120913_1453842.jpg


動かへん
「死んどんか」
いや
いっしょけんめい触覚を動かしとる

今度は真横から撮ってみる
羽は明るいグリーンで
葉脈みたいな模様がある
草むらで見つからへんように擬態になっとんねんやろな
そやけど
赤いクルマの上では身の隠しようがあらへん

c0120913_1454740.jpg


エンジンをかけても逃げる気配はない
そのまま発進

逆瀬川からトンネルを抜けて船坂へ
ボンネットを見ると虫はおらんようになってた
どっかへ飛んで行ってしもたんやろと思とったら
なんとフロントガラスにへばりついとおる
六本足で踏ん張って時速60kmに耐えとるねん

信号待ちの間に車内から撮影しよ思たら
お腹を撮られるのが恥ずかしかったんか
どんどんよじ登って視界から消えてしもた
屋根の上に移動したみたいや

クルマはそのまま高速道路に入って
東条湖インターチェンジで降りた
クルマの外に出てみたらもう虫の姿はなかった
さすがの六本足も時速100kmには耐えられへんかったみたいや


いったいなんてゆう虫なんやろ?
家に帰って虫の音WORLDで調べてみたら
そっくりなやつがおった
ヒメクダマキモドキや

c0120913_1455767.jpg


なるほど
葉っぱの上におったら見つかりにくいわ

by ikasasikuy | 2006-10-24 14:04 | 昆虫学
2006年 10月 23日
居酒屋
c0120913_1481812.jpg


少し前のこと
とある居酒屋である

カウンター席とテーブル席が少し
高級割烹料理屋というわけでもなく
駅前の大衆酒場とも少し違う
こじんまりとした居酒屋である
常連と思しき客が数人
騒ぐでもなく静かに語らい飲んでいる
独りふらりと立ち寄って
物思いに耽りつつ飲むのにちょうどいい

c0120913_1483373.jpg


季節が素通りする前に
秋刀魚を食う
サンマピンクの艶やかな身が
ぷるんぷるんと口の中で震える
上質の脂を舌の上で楽しむ
秋である

by ikasasikuy | 2006-10-23 14:06 | 大衆社会学
2006年 10月 22日
ビルヂング
c0120913_14102456.jpg
梅田新道角 ニッセイ同和損保フェニックスタワー


いまどきの
高層建築物である
優秀な建築デザイナーが
ない知恵や
ある知恵をいっぱい絞って
他の建物との差別化を図るべく
工夫をこらした結果が
これだ

ニョキニョキと
タケノコでもあるまいし
こんなものは
まるで木偶の坊だとボクは思うのである
味も素っ気もないのである
そして
みな
エラソに
遠慮会釈もなしに
地表を歩く人々を見くだしているのである


c0120913_14103430.jpg
曾根崎通 タカガワ梅田ビル


センスの善し悪しは別にして
せめて
これぐらいの洒落っ気ががあれば
「あはは」
と笑ってやってもいいかなと思わぬでもない
おなじコンクリの筍でも
少しは可愛げがあるではないか

by ikasasikuy | 2006-10-22 14:09 | 建築学