2006年 09月 13日
Rokkoman
今日もまた
いつもの浪人姿で市中見回りに出た平蔵である
空気はいくぶんひんやりとしているが
いまにも雨の降りだしそうな気配である
トアロードで辻駕篭を降りた平蔵は
ぶらりと裏通りに入った
そのとき平蔵が
「妙じゃな」
とつぶやいたのは他ならぬ気配を感じたからである
つけられてはいないが
どこからともなく視線を感じるのである
「はて」
振り返ってみたが
やはり(それらしき)人気はない
しかし
依然として視線はある
それも悪意のこもったものではなく
どこか優しげな暖かみのある視線である
「可笑しなことがあるものよ」

ひとつめの角を曲がった
ふと建物を見上げた平蔵が瞠目した
なんと
二階の窓から
西洋三味線を持った男がこっちを見ているではないか

Rokkoman_c0120913_19122565.jpg


ロッコーマンである
「こんなところに社屋があったのか」
建物の一階では
肉置きの良い老婆が箒で車庫を掃き清めている
「ちとものをたずねる」
「なんでござりましょう」
「この建物はいつからここにある」
「平成の大地震のあとに建ちましてござります」
「さようか、手を停めてすまぬのう」

Rokkoman

平蔵が子供の頃から
神戸元町にあるアコーステックギター屋である
元町商店街に店舗があったがいつの間にかなくなっていた
商店街に店があった頃は
買う金はなかったが
ヒマつぶしによくのぞいたものである

by ikasasikuy | 2006-09-13 19:11 | 建築学


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